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千葉地方裁判所 昭和25年(行)20号 判決 1958年7月19日

原告 開墾塩業株式会社

被告 千葉県知事・成田市農業委員会

主文

被告千葉県知事に対する訴を却下する。

被告成田市農業委員会(当時の名称公津村農地委員会、以下同じ)が別紙第一、二目録記載の各土地について昭和二五年二月一七日樹立した各買収計画は、いずれもこれを取消す。

訴訟費用中特に原告と被告千葉県知事との間に生じたものは原告其の余は被告成田農業委員会の負担とする。

事実

原告訴訟代理人は被告両名に対し、被告成田市農業委員会(当時の名称公津村農地委員会以下同じ)が別紙第一、二目録記載の各土地について、昭和二五年二月一七日樹立した各買収計画はいずれもこれを取消す訴訟費用は被告等の連帯負担とするとの判決を求め、その請求原因として、

原告会社は大正九年耕地拡張事業遂行の目的で設立され、以来印旛沼沿岸の不毛地の埋立、開発を行つて来たものであるが、大正一二年頃別紙第一、二目録記載の各土地の所有権を取得した。ところが昭和二三年一一月一九日被告成田市農業委員会は、原告会社所有の右各土地について、牧野に該当するとして、自作農創設特別措置法第四〇条の二第一項第一号により買収計画を樹立し、その旨原告会社に通知があつた。

そこで原告会社は異議の申立をなしたが棄却されたので、更に昭和二四年二月三日千葉県農業委員会(当時の名称千葉県農地委員会、以下同じ)に訴願したところ、同県農業委員会は何等裁決を為さず(今日まで裁決がない)被告成田市農業委員会は、昭和二五年二月一七日、右買収計画中別紙第二目録記載の土地の現況を田とし、買収価格等を改訂する旨の変更決定をなし、同月一八日右買収計画変更決定書を原告会社に送付した。右変更決定の内容を見るに従来の計画を変更し別紙第二目録記載の土地は水田として、別紙第一目録記載の土地は牧野として買収計画を樹立したものと見られる。そこで原告会社は、同年三月三日改めて被告成田市農業委員会に異議の申立をなしたが、棄却されたので、更に同年四月六日、千葉県農業委員会に訴願したところ、同年六月一〇日、同県農業委員会は右訴願を棄却するとの裁決をなし、同月一〇日該裁決書謄本の送達があつた。しかしながら、

第一、右別紙第一目録記載の土地についての昭和二五年二月一七日附買収計画には次のような違法がある。

(一)  別紙第一目録記載の土地中、堤塘内の土地四町一反七畝二六歩(成田市大字北須賀字中外埜一、六三二番地の一乃至八、同番地の一一乃至一六、同番地の一八乃至二九、同字一、六三〇番地の一八乃至二四、同番地の二六乃至四八、同番地の五〇乃至五九、合計一一町六反二六歩はいずれも堤塘の内と外とに分筆されていないが、右土地合計面積一七町三畝歩中四町一反七畝二六歩は堤塘内の土地である)の土地は、右買収計画当時現況が未墾地であつて牧野ではない。即ち昭和一一年に原告会社が右堤塘を築造、堤塘内の土地を水田に造成して部落民に小作させ、相当量の収穫をあげて来たが、其の後戦争のため小作農家において手不足等の理由から耕作を放棄したので、原告会社は小作料の徴収を止め、耕作しないまま放置していたので、右土地の一部は原野同様の状態となり、まこも、よし、等の家畜の飼料にも肥料にもならぬ草種の生えるに委せてあつたが開墾して水田になり得る開墾可能地である。本件訴願裁決の理由として説明するところによると、堤塘内の土地は表土が浅く耕作不適地であるとしているが、右の如く戦前水田として耕作し、買収後においても現に水田として耕作している事実に照らしても右堤塘内の土地が耕作可能地であることは明らかである。

右土地と同様な立地条件にある原告会社所有の印旛郡六合村大字萩原字東埜地先は、未墾地として買収されたものであるが本件の右土地も同様に未墾地買収の対象となるべき土地で、牧野買収の対象となるべき土地ではない。

(二)  別紙第一目録記載の土地中、堤塘外の土地は、家畜の放牧は勿論、採草にも不適当な土地であるから牧野ではない。

即ち、堤塘外の土地はいずれも印旛沼の平水位(YP二米)以下の土地で、一年を通じその大部分は水中に没しているから、家畜の放牧は絶対不可能であり、又右土地に繁茂する草はほとんど、まこも、であつて、そのほか、かや、よし、あし、等が僅かにあるにすぎず、これ等の草種は家畜の飼料又は肥料として利用価値に乏しいので実際上も右土地から採草して飼料又は肥料に用いている人はほとんどなく極く僅かの面積のみ附近の農家の者が勝手に採草しているようであるこの様に、右堤塘外の土地は公簿上原野の種目にはいるべき沼沢地であるから、これを牧野と認定して買収計画を樹立することは出来ない。

第二、別紙第二目録記載の土地についての昭和二五年二月一七日附買収計画には次のような瑕疵がある。即ち

(一)  右買収計画変更決定は、前記の如く原告会社の昭和二四年二月三日附第一次の訴願に対して、何等の裁決もなさないうちに、被告成田市農業委員会において千葉県農業委員会の指示に従つて買収計画変更決定という被買収者に内容の容易に解り難い形式を以てなされたものであり、関係書類を縦覧に供した事実もないから、右買収計画は違法である。

(二)  実体上の理由として、右土地は終戦後の混乱期に附近の農民が原告会社に無断で開拓し水田となしたもので、原告会社は同人等に小作させたことはないから、これを小作農地として買収計画を樹立することは違法である。

よつて違法な本件第一、第二目録記載の各土地についての各買収計画の取消を求めるため本訴に及んだと述べ

被告等の本案前の主張に対し、訴願の裁決によつて原処分が是認された場合には原処分は有効に存在するから、これに不服がある場合には原処分庁及び訴願庁のいずれを被告として訴を提起してもよいと解すべきところ、本件においては、被告成田市農地委員会の樹立した本件買収計画について、原告会社が訴願し、これに対し、千葉県農業委員会が訴願を棄却して右買収計画を維持し、是認したものであるから、原告会社が原処分庁たる被告成田市農業委員会及び訴願庁たる千葉県農業委員会(農業委員会に関する法律附則第二六項に基く訴訟の受継により被告千葉県知事となる、以下同じ)の双方を被告として本件買収計画取消の訴を提起したことは違法ではないと述べ、

本案の主張に対し、被告等は、「原告会社が本件土地を買受け所有権を取得するや水田造成の目的で部落民に築堤させ、その協力者には田を貸し、採草させるとのことであつたので部落民が築堤し、採草して来た、従つて採草は無償で期間を定めぬ使用貸借であるが、これは、原告会社の初代印旛沼出張所長鮫島亮輔との間に口頭で契約が結ばれたものである云々」と主張するが、原告会社が本件本地を買受け所有権を取得したのは大正一〇年のことであり、しかも当時の原告会社印旛沼出張所長は鮫島亮輔ではなく初代所長伊東一二である。右の点からみても被告の主張は事実無根であると述べた。

(立証省略)

被告等訴訟代理人は、本案前の申立として本件買収計画取消の訴中、被告知事に対する部分を却下するとの判決を求め、その事由として、原告会社は千葉県農業委員会に対する訴訟を受け継いだ被告県知事を相手方として買収計画の取消を求めているが、行政処分取消の訴は行政事件訴訟特例法第三条の規定により行政処分をなした行政庁を被告として提起しなければならない。しかして自作農創設特別措置法上の買収計画、訴願裁決、買収処分等は一連の段階的手続行為で、その各々が一つの行政処分として独立の訴訟の対象となるのであるから、被告適格も各行政処分庁をして各別に定めなければならないところ本件買収計画の樹立は被告成田市農業委員会であつて、千葉県農業委員会の処分でないことは同法第四〇条の四の規定に照らし明らかである。

従つて本訴中被告知事に対する訴は不適法であると述べ、

本案について、原告会社の請求を棄却する。訴訟費用は原告会社の負担とするとの判決を求め、答弁として、原告会社の請求原因事実中、原告会社の設立の目的、及びその事業がその主張の通りであること、原告会社が本件土地の所有権を大正一二年頃取得したこと、昭和二三年一一月一九日被告成田市農業委員会が、別紙第一、二目録記載の本件土地を、牧野として買収計画を樹立し、これに対し原告会社からその主張の様な経過で異議、訴願があつたこと、右訴願の裁決が現在に至るもないこと、被告農業委員会より、原告会社主張の様な買収計画変更決定通知書の送達があり、これに対し、原告会社がその主張の様な経過で、異議、訴願したがいずれも棄却されたことは認める。千葉県農業委員会は、原告会社の右第一次の訴願について調査審理した結果、前記買収計画には別紙第二目録記載の九筆の水田と、本件土地以外の水面部分をも牧野として包含していることを発見したので、これ等の土地は牧野の買収計画から除外すべきことを被告成田市農業委員会に指示したところ、同委員会は、右指示に従い、改めて昭和二五年二月十七日、右九筆の土地を農地(田)として買収計画を、右九筆及び水面部分を除いた別紙第一目録記載の土地を牧野として買収計画をそれぞれ樹立し、公告して、同月一八日から農地買収計画については一〇日間、牧野買収計画について二〇日間、関係書類を縦覧に供すると共に、その旨原告に通知した。もつとも右通知書には、前記の如く「買収計画変更」と云う文言が記載されているため、原告会社に多少の誤解を与えたかもしれないがそれがために買収計画を違法ならしめるものでなく其の他右買収計画には原告会社主張の様な違法はない。即ち、

(一)  別紙第一目録記載の土地は全部牧野である。本件土地中に堤塘があり、堤塘内の土地は原告会社主張の通りの地番、面積であること、右堤塘内の土地が本件買収計画樹立後、全部水田となつていること、昭和一一年頃、その一部が水田として小作されていたことは認めるが、右小作されていた部分は後に水害等により荒はいして買収計画樹立当時牧野になつたものである。又、本件土地の隣地で、印旛沼にそつてある原告会社元所有の印旛郡六合村字萩原東埜地先の土地が牧野としてではなく、未墾地として買収されたことは認めるが、右土地と本件土地とは、土地の状況を異にするから、右事実をもつて本件土地が牧野でないと云う理由にはならない。

原告会社は本件土地は印旛沼の平水位以下であると主張するが、そうでなく毎年春から、九月にかけては採草の目的に供されていた。詳述すれば、原告会社が本件土地を買受け所有権を取得した当時、水田造成の目的から部落民に築堤させ、これに協力した者には水田を貸し、採草をさせるとのことであつたので部落民は築堤し以来本件土地で採草して来たものであるが、右は原告会社の印旛沼出張所長、鮫島亮輔との間に口頭で結ばれた使用貸借契約に基くものである。仮に同人にかかる契約を締結する権限がなかつたとしても、同人は小作料の決定、取立等をなし、同出張所長名義で小作料の領収書を発行していたものであるから、小作人等には右鮫島亮輔が、かかる契約を締結するについて、原告会社を代理する権限があつたと信ずべき正当の事由がある。

従つて本件土地中、前記九筆を除いた土地全部は採草の目的に供されていた土地であるから、被告成田市農業委員会がこれを牧野と認定して樹立した買収計画には違法はないと述べ、

(二)  別紙第二目録の九筆の土地は買収計画樹立当時水田であるが、前記の如く被告農業委員会は昭和二五年二月一七日新たに農地として買収計画を樹立したものである。而して原告会社の第一次の訴願に対して裁決がないことは事実であるが、昭和二三年度の買収計画は右新たな買収計画樹立の際取消され、訴願は、その対象を失い、訴願利益の点から当然却下されるべき運命にあつたものであるから訴願の裁決がないからと云つて、後に樹立された本件買収計画が違法となるものでない、まして原告会社は後の計画に対し異議、訴願をなし、その裁決を得ているのであるから原告会社の主張は理由がないと述べた。

(立証省略)

理由

第一、被告千葉県知事に対する訴の適否について、

自創法による農地買収計画に対して異議申立があり、右異議却下決定に対し更に訴願があつて訴願裁決庁が買収計画の当否を判断して訴願棄却の裁定を為した場合においても尚申立人は訴願棄却裁決を求めずして買収計画そのものの取消を訴求することを得るものと解するのを相当とすべく、この場合右計画の樹立者である市町村農地委員会を被告となすべきことについて異論がないが、訴願裁決庁が訴願棄却裁決に当り右計画を審査し、之を認容維持している点に着目して、訴願裁決庁を被告としても右計画の取消訴訟を提起することが出来ると解する説もある。而して後者も適法な訴であるとの説に従うとしても右訴の提起は右計画の樹立庁か又は訴願裁決庁の何れかの一を選んで相手方とすべきものであつて、両者を共に被告として訴を提起することは行政事件訴訟特例法第十二条の存する以上其の必要がなく訴訟経済上到底許されないと云う外なく、両者を共に被告として訴が提起されたときは、その一つの訴は不適法として却下しなければならない。然らば二つの訴の内何れが不適法であるかというに、農地の買収計画について行政事件訴訟特例法第三条に謂う処分をした行政庁は、右計画樹立者たる市町村農地委員会(後に農業委員会)であると云うのを直截簡明な見解とすべく、訴願裁決庁は農地買収が買収計画の樹立、異議決定、訴願裁決、計画の承認等一連の手続を以て進行するから訴願棄却裁定の段階においてもなお買収計画に前述の如き関係があるに鑑み、買収計画の処分庁と云い得ないこともないとして被告適格を与えられるに過ぎないものであり、しかもこの場合国の利益に関係ある訴訟についての法務大臣の権限等に関する法律第五条の存する以上、上級行政庁と下級行政庁との訴訟遂行の能力の差異については何等考える必要もないのであるから、買収計画樹立者たる市町村農地委員会(後に農業委員会)に対する訴を適法と認め訴願裁決庁に対する訴を不適法として却下すべきものと解するのが相当である。

ところで本訴における被告千葉県知事は訴願裁決庁たる千葉県農業委員会に対する訴訟を、農業委員会等に関する法律附則第二六項により受け継いだのであるから、前段説明する理由により同被告に対する本件訴は不適法として之を却下しなければならない。

第二、被告成田市農業委員会に対する訴について。

原告会社がその主張の様な目的で設立され、印旛沼沿岸の不毛地の埋立、開発を行つて来たこと、大正一二年頃原告会社が本件土地を取得したこと、昭和二三年一一月一九日被告成田市農業委員会が別紙第一、第二目録記載の各土地等を牧野として買収計画を樹立し、これに対し原告会社から、その主張の様な経過で異議訴願があつたこと、右訴願に対する裁決のないうちに、被告成田市農業委員会より原告会社主張の様な買収計画変更決定通知があり、右変更決定の内容を見るに従前の買収計画を変更し別紙第二目録記載の土地は水田として、別紙第一目録記載の土地は従前通り牧野として買収計画を樹立したものと見られること。右変更決定に対し原告会社が異議、訴願をしたが原告会社主張の日時却下及び棄却されたことは当事者間に争がない、しかして

(一)  別紙第一目録記載各土地についての買収計画について、

審究するに別紙第一目録記載土地中に堤塘があり堤塘内の土地の面積が原告会社主張の通りであること、堤塘内の土地の一部は昭和一一年頃原告会社が水田として他人に小作させていたことがあること、並びに堤塘内の土地は本件買収計画樹立後全部水田として耕作されていることはいずれも当事者間に争がなく、右当事者間に争のない事実と成立に争のない甲第三号証の一乃至八及び証人菅井操、中英敏の各証言とを綜合すれば別紙第一目録記載の各土地は本件買収計画書樹立当時すべて印旛沼周辺の不毛の土地であつたが、内四丁歩余は堤塘内の土地であり、原告会社は本件土地中印旛沼に遠い陸沿いの比較的高位置にある場所を水田に造成しようとして多額の費用を投じて堤塘を築造して囲繞したが、同高度の土地をすべて堤塘で囲繞することは未だ為し遂げて居らず従つて堤塘外の土地にても堤塘内の土地と同高度の土地が広面積存したこと、而して堤塘内の土地と同高度の堤塘外の土地の大部分は本件買収計画後、土地の売渡を受けた者等により新たに堤塘を以て囲繞され水田とされたこと、右以外の堤塘外の土地は大部分平水位(YP二米)以下の土地で一年の大半は水中に没していること別紙第一目録記載土地は堤塘の内外を問はずススキ、等の陸生植物の生えていた部分は極く小面積で他の大部分にはマコモ、ガマヨシ、アブラガヤ等が生えているが(水田となつた部分については水田となるまで生えていたが)これ等草種は何れも長草型の質粗剛なもので家畜の飼料、及び肥料の材料としては早夏に利用しても中等以下の品質であること殊に六、七月頃は水位が比較的高いので舟を利用する以外に本件土地の大部分では採草出来ず又叢生地内での小舟操作は極めて困難で労力的経済的にも採算がとれないので本件土地において採草するものは非常に少く、処々小面積において採草したるに過ぎないことを認めるに足るべく、証人小川源一郎の証言中右認定に反する部分はたやすく措信し難い、この点につき被告は附近農民は本件土地を採草地として利用し、同人等の農業は之に依存していた旨主張するが本件土地が買収せられると、附近農民が前記認定の如く比較的高位置にある堤塘内の土地及び之と同高度の土地を忽ちにして水田として耕作し又前記甲第三号証の一乃至八により認められる如く、より低い右以外の土地を草の生えるまゝに放置している事実は附近農民の本件土地を採草地として利用していた程度並びに同人等の農業の之に依存していた程度の極めて低いことを如実に示すものである。然らば本件土地中帯水地帯が自創法に所謂採草地と云い得ないのは勿論比較的高位置の堤塘内外の土地も開墾に適する未墾地とは云い得ても採草地と云い得ないものであつたことが明である、よつて被告成田市農業委員会(もとの名称公津村農地委員会)が別紙第一目録土地を採草地である小作牧野と認めて買収計画を樹立したのは其の余の点を判断するまでもなく違法と云はなければならず右計画の取消を求める原告の請求は理由があるものとして認容すべきものとする。

(二)  別紙第二目録記載の土地についての買収計画について審究するに被告成田市農業委員会が昭和二五年二月一七日別紙第二目録記載の九筆の土地を農地として買収計画を樹立したことの適法か否かについて判断するに、原告会社は、右土地は小作農地ではないから買収計画は違法だと主張するのに対し、被告は、単に右土地は農地として買収計画が樹立されたと主張するのみで、他に右買収計画の適法性を理由づける何等の主張もなさないばかりでなく、これを認めるに足る証拠もない。即ち証人小川源一郎の証言には原告会社より本件土地の一部を部落民が借りて田としたとの供述があるが、右供述のみでは、本件土地の如何なる部分を何人が借受け、水田として耕作したものか判明し難いから、右九筆の土地が小作農地であつたことを肯定するに足る証拠とはならない。従つて被告成田市農業委員会(当時の名称公津村農地委員会)の別紙第二目録記載の各土地について樹立した昭和二五年二月一七日附買収計画はその余の点を判断するまでもなく、違法として之を取消さなければならない。

よつて被告成田市農業委員会に対する原告会社の本訴請求をいずれも理由あるものとし認容すべきものとし、訴訟費用につき民事訴訟法第八十九条第九十三条を適用して主文の通り判決する。

(裁判官 内田初太郎 山崎宏八 桜林三郎)

(別紙目録省略)

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